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次の日の朝、学生服に着替えた直樹は狭く急な階段を下る。
手提げ鞄を右手に持ち、肩に担ぐ。
長身で細身の直樹には、黒い学生服が良く似合う。
階段を下りると居間から出てきた母親と目が合った。
すぐに母親が目をそらす。
年の割に急に老け込んだ母親の顔。
「オカン、俺、じいちゃんの家に行ってくるわ。少しの間、戻らん」
直樹が、そう言うと母親は怪訝そうな顔で頷く。
直樹は、そのまま家の外に出ると駅の方に向かった。
初夏の熱気が、黒い学生服を焼く。
すぐに直樹の全身から汗が吹き出す。
最寄り駅から祖父の家までは、快速電車に乗り二時間程度で着く
その程度の距離なのに父親と母親の仲がこじれたここ数年、祖父と祖母とは一度も会っていなかった。
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