プロローグ

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安っぽい人形劇のようなその光景は、何故か見る者に現実感を与えるものではなかった。 そんな彼の一人舞台は、まだまだ終わりを迎えない。 「ではここで、一つ出題してみましょうか。猫を殺すものは好奇心。では、ネズミを殺すものはなんでしょう? “猫”なんて回答は、よしてくださいね」 そして訪れる、僅かな静寂。 暫くはその静寂の中に佇んでいた彼の声が、ややあってそれを切り裂いた。 「答えはですね、推理力です。え? それは一体何故かって? それについては、この中で語る事にしましょうか」 そう言う彼が手で指し示す先には、突如古びた不気味な洋館が浮かび上がる。 いや、浮かび上がると言うよりは、元々そこにあったのかもしれない。 それについて知るのは、目の前のこの男だけなのだろうが。 「さぁ、参りましょう。この舘の中では、数々の事件が巻き起こる筈です。それらの答えですか? きっと見付かりますよ。あなたが探しているのなら。もう分かりますね? 私が“あなた”に語り掛けているという事」 その言葉と共に踵を返し、彼は軽快な足取りで舘へと向かう。 やがて途中で振り返り、彼は“あなた”を招くように、満面の笑みで手を振るのだった。
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