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「それらの事件と、この世界の存在は同義。あなた様が飽きられたりしない限りは、必ず全ての事件が現実のものとなる事でしょう」
彼の言葉は文章としては支離滅裂で、聞く者に対する説明にはなりえないように感じられた。
だが、彼が放つ落ち着いた空気。
それらは不思議と、残りの事象については後々説明すると、そう語っているようにも思えてしまう。
と、その時、彼は今一度にっこりと笑うと、踵を返して歩を進めながら背面の自分に対して声を張り上げた。
「さて、長話もなんですし、そろそろ行きましょうか。ここで巻き起こる七つの事件。それら全てを目の当たりにした時、あなたは知る事でしょう。私が言った“推理力はネズミを殺す”という言葉の意味を」
そう言い残すや否や、彼はどこかふらついた足取りで館の奥へと向かう。
自らのシルクハットに手を当て、ステッキを振りかざしながら歩く彼を見ていると、どこかの喜劇王を彷彿とさせるようだった。
すると途中でその喜劇王は振り返り、またしても口を開く。
まるで先程の、館へと招く時のように。
「さぁ、参りましょう。第一の部屋へ。あなた様の推理力に、期待させて頂きましょう」
そう言うと彼は再び背を向け、薄暗いホールの奥へと消えていくのだった。
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