奥村俊也

3/3
前へ
/54ページ
次へ
少し時間をかけて、答えを見つける。 「あぁ……知らなかったよ。 てゆーか、よく知ってたね。誰にも話した事なかったのに。」 綾乃は過剰なほど明るい笑顔をつくってみせた。 「まぁね…」 そして俺は静かに笑う。 人間てヤツは、秘密がバレそうになると異常に笑顔になる。 そんなこと関係ありませんよ、と嘘が暴かれる緊張を笑顔で隠そうとする。 そしてそれを見て笑うのは秘密を知ってるヤツだ。 つまり俺。 綾乃の事ならどんな嘘でも見抜ける。 綾乃の秘密は全て知っている。 俺の持っている、唯一の特権だ。 葬式が半分ほど過ぎたころ、春が呑気に現れた。 俺等の高校の制服、第3人目だ。 入って来るやいなや、由宇の両親に引き止められた。 遠くで聞こえなかったが、見る限り母親の方が春に詫びてるようだった。 頭を下げた父親の拳が、震えてるようにも見えた。 自分の子供が死ぬってのは、どーゆー感じなのかなぁ。 そんな事をぼーっ、と考えていたら、俺の隣に居た綾乃がいつの間にか春の傍に移動してた。 由宇に花をやっている2人をぼーっ、と眺めて 俺の死に際はどんなかなー なんて事を考えていた。
/54ページ

最初のコメントを投稿しよう!

13人が本棚に入れています
本棚に追加