二ノ宮綾乃

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由宇の死亡についての調査は、「気晴らしに屋上に出て雨で滑って誤って落下した」というあっけない理由で解決した。 明日には遺体も自宅に返され、3日後に葬式だ。 私は「仲のいい友達」として出席しなければならないだろう。 よく4人で集まっていたこの学校の屋上にも、もう来る事は無くなるのだ。 まだ19:00を過ぎたばかりだが、この時期の空はもう暗かった。 「あれから1年が経つんだね…」 独り言のように呟いた私を、春が優しく抱き寄せた。 春の、柔らかい香りがした。 私の春。 私だけの春だ。 誰にも邪魔させない。 2人だけの世界を、壊される心配はなくなったのだ。 「やっと…幸せになれるね…私たち。」 同じように春を抱き締めると、春は優しい笑顔で私にキスをした。
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