◇◇ 第50章 クリスマスの奇跡 ◇◇

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「えっ!?」 あたしが、ここに来てから、ずっと、あたしの居場所として使わせていただいていた机が、なぜか寛げた椅子が、和也さんの愛用していた物だったなんて…… 次から次へ、驚きの連続で、声もまともに出ない。 「ふーん。そっか……」 すべてを理解した和也さんが、机をゆっくり撫でながら、優しい微笑みをくれた。 「それは、仕事がさぞかし、はかどっただろう?」 和也さんが、ニヤリとあたしに笑いかける。 「もちろん、はかどったわよねぇ、璃子ちゃん」 和也さんの言葉に、薫さんが冷やかすように返す。 薫さんまで、そこでツッコミいれますか!? あたしは、未だ冷めやらぬ驚きと、気恥ずかしさに照れながら小さく頷いた。 周りには、自然と、笑顔と穏やかな空気が生まれた。 そうだったんだぁ…… あたしは、和也さんに、ずっと見守られていたんだ…… 認識すればするほど、じわじわと、身体中に温かな温もりが広がってゆく。 次々に起こるサプライズに戸惑いを隠せないまま、でも、少しずつ喜びを理解してゆく自分がいた。 ピンポーン♪ 「いらしたわっ」 薫さんが、うれしそうに微笑みながら、和也さんに目配せをする。 新たなお客様の訪問に、あたしは、お部屋の端に避けた。
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