◇◇ 第50章 クリスマスの奇跡 ◇◇

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応接室の扉が、ゆっくりと開く。 扉からは、とても品の良い、老紳士が入ってきた。 「やぁ、璃子ちゃん、こんばんは」 その素敵な老紳士は、よく見ると、正装をしたゲンさんだった。 普段の作業着とは、あまりに違うゲンさんを、思わず2度見して、驚きの声を上げた。 「あーっ、ゲンさん!」 あたしは、気心の知れた新たなお客様の登場に、ホッとして近づいた。 「璃子ちゃん、今夜は、一段と美しいね。眩しいよ」 「やだっ、ゲンさんったらぁ! ゲンさんこそ、見違えるほど、とっても素敵です!」 そっと差し出されたゲンさんの右手に、あたしは、左手を乗せて、軽くしゃがんで、ご挨拶した。 「じゃあ、褒めてもらったお礼に、今度、素敵なレストランでの、お食事にお誘いしようかな?」 「もちろんっ!ぜひ、喜んで♪」 ゲンさんの粋なお誘いに、あたしは、二つ返事で頷いた。 そして、ふたりで目を見合わせて笑顔を溢す。 「それはうれしいねぇ。アッハハハ……」 ゲンさんは、とてもうれしそうに、高らかな笑い声をあげた。 ゲンさんの斜め後ろには、普段通りのスーツを着こなした時田さんが、ゲンさんとあたしの会話を、微笑ましく見守りながら立っていた。 「時田さん、こんばんは」 「こんばんは、璃子さん」 あたしの挨拶に、時田さんも笑顔を返してくれた。 仲良しコンビの登場に、気持ちが一気にほぐれてゆくのを感じた。
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