◇◇ 第50章 クリスマスの奇跡 ◇◇

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「ゲンさん」 「んっ、なんだい?」 あたしは、手を添えたまま、少しゲンさんに近づき、小さな声で話しかけた。 「あのね、あたし、今夜は、素敵な方にエスコートしていただいてるんです。 ぜひ、ゲンさんにご紹介したいんですけど」 「それは、是非とも紹介してほしいね。 以前、『いつも、ここに居る』って言っていた方かな?」 ゲンさんは、空いている左手で、トントンと自分の胸を叩いた。 「クスクスッ……そうなんです」 絶対に、ゲンさんは、喜んでくれる。 あたしは、そんな確信を胸に、笑顔で大きく頷いた。 「あのね、あちらに……」 ゆっくりとゲンさんを促すように振り返る。 てっきり、机のそばに立っていると思っていた和也さんが、いつの間にか、あたしの斜め後ろに立っていた。 驚いて、和也さんの顔を見上げる。 和也さんの表情に、さっきまで薫さんと話していた時のような柔らかさは無い。 その代わりに、凛とした真面目な表情を浮かべている。 あれ? どうしちゃったのかな? もしかして、初めてお会いする方だから、緊張してる? 和也さんが緊張……? いやいや、そんなはずは、ないない、ない。
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