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「和也の祖父の松本元(まつもと はじめ)です」
「……えっ!?」
「元気の『元』と書いて、『はじめ』と読むんだ。だから、昔からの友人は、皆、私のことを『ゲンさん』と呼ぶんだけどね」
あたしは、呆然としたまま、ゲンさんと尚も見つめ合っていた。
「ゲンさんが……筆頭……株、主の……お祖父様?」
やっとの思いで、途切れ途切れで呟く。
「そんな付録もついていたかな?」
ゲンさんは、穏やかな微笑みを浮かべた。
誰か、地球の裏側まで続く穴を掘って、あたしを今すぐ、落としていただけませんか?
大混乱のあたしをよそに、和也さんが言った。
「お祖父様、今夜は、お話があって、こちらに参りました」
「あぁ、なんだい和也?」
和也さんは、ひと呼吸置くと、言葉を発した。
「今まで、色々とご心配をおかけしました。
時間は掛かりましたが、共に人生を歩んで行きたいと、心から思える人に、やっと出逢う事が出来ました。
彼女は、桜井璃子さんです。
私は、彼女と結婚したいと思っております。
ぜひ、結婚のお許しをいただきたいのです」
少し緊張したような、でも力強い口調だった。
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