◇◇ 第50章 クリスマスの奇跡 ◇◇

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「結婚?」 ゲンさんが、和也さんに向き直って問いかける。 ゲンさんの落ち着いた声色が、眼差しが、一瞬でその場の空気を、凛と引き締めた。 何と答えるのだろう? ゲンさんだけど、ゲンさんとして答えるのではない。 渡グループの筆頭株主としての、松本家の家長としての判断…… 認めていただけるのだろうか? いや、そんな簡単なはずはない…… あたしの左手が、思わず、力を失い、預けていたゲンさんの右手から抜け落ちそうになる。 すると、ゲンさんの右手は、そっと、あたしの左手を掴んだ。 えっ……ゲンさん? 伏し目がちになりかけた眼差しを、あたしは、ゲンさんに戻した。 「和也」 「はい、お祖父様」 「結婚と言ったね?」 静まり返った部屋に、ゲンさんの声が響く。 「はい」 和也さんが、力強く答える。そして、続けた。 「私は、幼い頃から、お祖父様とお祖母様を見ながら育ちました。 おふたりの仲睦まじく、共に試練を乗り越えながら、歩むお姿は、いつしか、憧れではなく、私に課せられた、越えなければならない高いハードルへと変わっていました。 そんな私の心の中に抱えていた高い壁を、いとも簡単に乗り越えて来たのが、璃子です」
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