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和也さんの決意を聞いたゲンさんは、少しだけ、先程よりも、柔らかい口調に変わった。
「和也」
「はい」
「璃子ちゃんは、私が、この歳になって出来た、大切な友人でね。
間違っても、璃子ちゃんを悲しませるような事があっては困るよ」
えっ……!?
思わず、ゲンさんの言葉に耳を疑う。
ゲンさんは、言葉尻は、少し和らいだものの、和也さんの心を射抜くように、鋭い眼差しを向けていた。
「はい、璃子を必ず幸せにすることを、お約束します」
ゲンさんと、和也さんから発せられる、もったいないほどの大切な言葉たちが、あたしの周りを飛び交う。
驚きと、衝撃で、あたしは、ゲンさんと、和也さんを交互に見つめた。
「璃子ちゃん」
ゲンさんが、穏やかな口調で、あたしの名前を呼ぶ。
そして、今までとは違い、柔らかな眼差しを、あたしに向けた。
「……はい」
穏やかな空気であってもピンと背筋が伸びるようだ。
「実は……私が、璃子ちゃんと和也の事を知ったのは、ほんの先日の事だったんだよ」
「えっ!?」
「覚えているかい?先日、桜の樹の下で璃子ちゃんが話してくれた大切な言葉を」
「……はい」
「あれは、私が、ずいぶん昔に、あの桜の樹の下で、妻の美千代に贈った言葉だったんだ」
「……っ!?」
あたしは、驚きで、言葉が出なかった。
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