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それぞれに、広いダイニングのテーブルへとついた。
「薫、孝博君は?」
「お祖父様、申し訳ありません。主人は、今朝、急遽、ロンドン支社からの要請で旅立ちました。
お祖父様にも、皆様にもよろしくと申しておりました」
「そうか。それは残念だったね」
「お父様とお母様にも、お声をお掛けしようと思ったのですが、さすがに、一気に家族全員との対面は、璃子ちゃんにも負担かと思いまして……」
「確かに、それは酷かもしれないですね」
隼人さんが、相槌を打って頷いた。
「そうか。和也、璃子ちゃんを、いつ、紹介するんだい?」
「年明け早々にでもと……」
「お父様もお母様も、璃子ちゃんに会えるのを楽しみにしているから、すぐにでも連れて行くといいわ」
「あぁ、そうするよ」
あたしは、みんなの会話に、黙って耳をすまして聞いていた。
だが、心臓は、緊張で、まるで釘打ち職人のように、トントントントンと、音を立てていた。
房子さんの手料理がコース料理のように、時田さんの手によって運び込まれる。
みんなは初めから舌鼓をうっていたが、あたしは緊張で味も何も感じなかった。しかしながら、いつの間にか周りの和やかな会話の雰囲気に癒され、食べ終わるころには落ちついて至福の時を過ごすことが出来た。
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