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「そろそろ、食後のコーヒーでも淹れようかな?」
「えっ!?お祖父様が直々にですか?」
立ち上がるゲンさんに、薫さんが言った。
「あぁ、こんなめでたい夜には、自慢のコーヒーを振る舞いたくなるね。
璃子ちゃん、手伝ってくれるかな?」
「あっ、はい」
急に振られて驚きながら、あたしは立ち上がった。
ダイニングの端に置かれていたテーブルで、挽いてきた豆を、ドリッパーにいれ、サーバーにセットする。
キッチンで沸かしてきたお湯の入った細口のステンレスポットを、時田さんが、運んできた。
ゲンさんが、チョロチョロとお湯を垂らす。
コーヒーの豊潤な香りが、部屋中に広がった。
「こうやって、ふやかしながら、豆の声を聴くんだ」
ゲンさんは、とても楽しそうだった。
「次は、璃子ちゃんにも淹れてもらおうかな?」
「ダメですよ。コーヒーは、ゲンさんの担当です!
あたしは、おやつ係ですから。
これからもずっと、美味しいコーヒーを、ご馳走してください」
穏やかな眼差しが重なる。
「そうだね。璃子ちゃんの言う通りだ。これからも、コーヒー担当の座は、誰にも譲らないようにしよう」
「ありがとうございます」
あたしは、笑顔で答えた。
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