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祖父と璃子の仲がこれほどとは……
祖父を「ゲンさん」と呼ぶぐらいだから、ある程度の親密さは、想像していた。
だが、ふたりの信頼関係は、俺の想像をはるかに凌駕していた。
俺が、危惧していた最大の障壁は、すでに璃子がひとりでクリアしていた訳だ……
璃子は璃子で、日本で、俺にも勝る大仕事を、見事にやり遂げてくれていた。
コーヒーを淹れるふたりを見つめながら、俺は、璃子への尊敬の念にも似た感情とともに、深い安堵感に包まれていた。
璃子の姿に、おぼろげながら、若かりし頃の祖母の姿が重なる。
『はじめさん』と呼びながら、寄り添う祖母の姿を思い出した。
「なんだ?ジィ様にヤキモチか!?」
「まさかっ」
ニヤける隼人に、言い返した。
「まさに、最強の刺客あらわる!ねっ」
冴子までもが、俺をからかう。
「……クスクスッ」
薫姉さんは、そんな様子を見ながら笑っていた。
「おふたりの心の距離は、とても自然に、縮んでゆかれました」
お皿を下げながら、時田さんが、横で呟いた。
「そうですか」
「ええ。璃子さんが発する癒しのオーラは、どなた様のお心にも、スッと飛び越えて、届いてしまわれるのでしょうね」
時田さんが、先程の、俺の告白になぞらえ、にっこりと微笑む。
時田さんまで……
「あぁ、そうだね」
俺は、少しだけ照れながら頷いた。
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