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(おかしい……! こんなミッション今まで無かった!!)
ゴム質な黒色の全身スーツを着用している青年――逢初美澄(あいぞめみすみ)は、まるで中世時代の西欧諸国のような町並みを疾走していた。既にここが日本じゃないという事は分かっている。
その後ろに、十五メートルはあろう巨大な人間――巨人が続いている。
今回のターゲットである巨人と人間の歩幅が同じである筈も無く、追い付かれるのが筋の筈である。しかし逢初は踏み潰されてはいない。
恐るべき跳躍力、身体能力で疾駆し続けていた。
その人外な力を発揮しているのが全身の黒いスーツである。身体に合わせてぴっちりしたそれが逢初の身体能力を強化、アシストしているのだ。
(バラバラに転送されてチームとはぐれちまッたままだ……)
一本道の街道を走る逢初には顔に若干の焦りが張り付いていた。
(もう一度なんとか、弱点を……)
逢初は覚悟を決め、角を曲がった瞬間に大きく前方に二度跳躍する。それで五十メートルほど跳躍したが、巨人はすぐにその距離を詰めるだろう。
着地前から振り返り、身体を反転して着地、スーツの大腿部にあるホルスター
から銃を抜いた。
ハンドガンサイズで、玩具のような形状をしているソレは、逢初が二つあるトリガーの内の下側を引くと、ギョーンという音を出して外装がXの字に解放された。
しかし肝心の弾丸が射出された様子は無い。
冷却用に外装がXの字に解放され、銃口から光が放たれただけである。
角から現れて光を浴びた巨人が逢初との距離を詰め、あわや捕まるという所で、突如、ババンッ! と破裂音がし、逢初の狙い通りに巨人の目玉付近が吹き飛んだ。巨人がたまらず後退する。その隙にまた、距離を離す。
この、対象を内部から爆発させる銃にはタイムラグが存在する。
「よッし」
だが、倒れない。
ボボボ、と傷口から蒸気が上がり、再生されていく。残った眼が逢初めをギョロリと見据え、先程と同じように地響きを立てて駆けて来る。
逢初はまた走り出す。
先程からずっとこうだった。破壊したのが足だろうが顔だろうが、奴らは身体を再生して、しつこく追ってくる。
「再生とか卑怯だろ……」
およそ大半の生物が弱点である頭――何度か頭が無くなっても生きていた星人は居たが――を吹き飛ばしても殺せず、一、二分で再生するなど倒せる筈が無い。
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