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「汚ねぇなァおい」
「うぅ……ぅぅう゛……」
今は話しかけないでよ……。
話す気分じゃない……。
ていうか、汚ないとか、そういう問題じゃないんだからね!
こっちは死んだ悲しみに直面してんのに、私の気持ちなんか、あんたに分かるわけない!
と言ってやりたかったんだけど……なんせ、上手く喋れない。鼻水が邪魔だ。
「面倒くせぇ女……」
小言を良いながら、イケメンが立ち上がる。
なんなんだ! と悪態つきたいのに、やっぱり鼻水が邪魔で……しかも詰まっちゃって、言葉にならないよ~!
「顔、上げろ」
「ふぇ……?」
頭上に落とされた声に反応して顔を上げれば……。
イケメンが、鼻水を拭いてくれた……。
「い゛……い゛だいっ!」
ちょっ……紙がかたい! かたくて痛いんだけど!?
何で拭いてくれちゃってんのぉー!?
まじでティッシュプリーズ! 痛すぎる!
「…………」
うっわ……痛いっつったのに、無言だ。むしろ、ティッシュを出そうって気配すらない。
無言で私の鼻水を拭き取ったイケメンは、溜め息を吐くと真っ黒で恐ろしい目を向けてきた。
怖い……見下ろされると、怖さが倍増ですね。
「喋る気になったか?」
こっちが泣いていてもお構い無しのイケメンは、決して優しくない声を落として元の場所にまた座った。
「聞こえてんのかよ……?」
私が返事をしなかったからだろうけど、イケメンの目は細くなって……凄みのようなオーラを醸してきて、怖すぎる……。
あまりの怖さから今の状況がまた頭に戻ってきて、慌ててコクコクと頷いて返したものの……何から話せば良いのか分からない。
だけど……話さないとね。
縄で縛られてるんだもん。
しかも、目の前のイケメンに殺されるって思った。
空気が、重くてひんやりしすぎてる……。
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