二匹目

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   やっちまった……。  ご本人様がまさかこんな私ごときの尋問をしているなんて思わなかっただけに、うっかり言ってしまったじゃん!  証拠のチョイス、明らかに間違えちゃったじゃん!  てか、土方って……こんなイケメンだったのかーっ 「いやぁ……まさか御本人様とは思わなかったです」  ペコリと無理に体を前へ倒してお辞儀してみたけど、突き刺さるような視線に体が痛い。  いや……縄が食い込んでで痛い。 「……テメェ、そのこと誰かに言ってみやがれ。 俺が切り刻んでやっから」  切り刻むという脅しに、たまらず半端ない汗が畳へポタポタと流れ落ち。  確実に、踏んじゃいけない切り刻まれるフラグを踏みかかっていて……少し上げた視線の先に、ドス黒い何かを纏った恐ろしい土方が……私を睨んでるぅぅううう! 「すすすすすみまてんっ!」  かっ……噛んだぁぁあああ!  こんな命のピンチな時に、すみまてんってなんで噛むのぉ!? 「あぁ?」  やばいよ……ヤバイヤバイヤバイ……ほんとにヤバイ……。  タイミング悪すぎ、なんでこんなときに噛むの? なんで…………あっ! 「ほほほんとにすみまてぇぇぇぇん! これ、方言なんす! すみまてんって方言なんです!」  さっきの英語の件を思い出して、私は慌てて方言ということにした。  なかなか上出来な嘘をつけたんじゃない?     
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