二匹目

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  「稀か……」  小さく呟かれた言葉は、何かに納得するような声色で紡がれ……土方は、腕を組んで数回コクコクと頷いている。 「テメェ、これから起こること知ってんだよな? 話せっつったら話すのか?」 「え……何を言ってんですか? 言うわけ無いです。 歴史が変わったら、未来に住まう皆さんにご迷惑がかかっちゃうじゃないですか。 私は、あの時代が好きなんです。変わってほしく無いですから言いません」  利用されたら嫌だな、と思って冷たく言い返した。  利用価値を存在価値に当てはめてほしくないしね。そんなことされたら寂しい。  それに、私はあっちの世界が好きだ。  良いことばかりじゃないけど、大好きなお祖母ちゃんや友達と過ごした時間は楽しくて、幸せだったんだから……あの時間が変わるのは悲しいもん。 「……わかった。だが、これだけは答えろ。 テメェの居た世は……殺生が当たり前だろ?」  決めつけたように言われて、私は目を見開いた。  殺生が当たり前? なんでそうなる? どうしてそうなるんだ? 「逆ですよ。人を殺すことは罪です。 私の居た世は、刀なんて持てないし、殺し合いなんてありません。 平和そのものです」     
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