浅葱色

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    そっと道場を覗いてみた。  そこにいる男たちは、声を大にして打ち込みの練習をしていて、私の目はその中でも、顔も姿も綺麗なイケメンを見つけてしまった。  ドクンと跳ねる心臓……。  こ、これは恋の始まりのゴングだ。間違いない……!  その綺麗なイケメンは、次々に向かって来る男共を打ち込んでく。  剣道にそこまで詳しくない私が見ても分かるくらい、体が軽いのか、一歩の出が他より速い。  かっ……カッコイイ……。  ドクンドクンドクンと鳴りやまない心臓の音。  日頃から、恋愛体質だと周りに言われて来たけれど、今回のこの胸の高鳴りはきっと、一目惚れだけでは終わらない気がする。  これは安い恋でなく、本気の恋愛になるにちがいない。  さぁイケメン!  こっちに向いておくれ!  心で叫び、イケメンと目が会うという素敵なトキメキを待ち望んでいたら…… ビュッッ―― 「…………」  私の顔のギリギリ真横を、何かが通り過ぎました。   
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