浅葱色

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   固まる私の視線の先には、ニコニコと笑う綺麗なイケメンの彼が私を見ているのを捉えていて、ドクンドクンと心臓が高鳴る……。  いや……びっくりし過ぎて心臓が猛スピードで走り出す。  私の顔の横を通り過ぎたものは、確実に彼が持っていた木刀であり、それを投げたのはイケメンの彼であり……まさかのドSですか? 「……大丈夫?」  壁に引っ付いたまま視線ごと固まる私に、厳つい顔の源さんが優しく声をかけてくれた。  だけど、その声は耳から耳へ通り抜ける。  目が……離せないんだよ。  彼がカッコイイからってのもあるけど、彼が私から目を逸らすことなく近づいて来るから。  動けない……金縛りみたいに。  怖いんだ……空気が。  私を見る目は、優しくない。綺麗な顔立ちだからか、笑顔だというのに笑えていないことが、更に怖いと思った。  心の底が冷えるような感覚が、私の胸をザワつかせる。     
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