浅葱色

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   男装したあの人とやらが強かったせいもあって、私は道場内に入っちゃったけどさ……、 「まじで無理っ! 無理ですっ! 聞こえてますか!? 無理って言ってるんですけど!」  半泣きよおおお! 「あっ……竹刀より木刀ですよね? はい、どうぞ」  イケメン沖田ァ!  私の言葉を無視ですか?  てか木刀って決まってるの?  差し出された木刀は、受け取れませんよ……?  だって、私、剣道歴2ヶ月の素人だしさ、受け取っちゃったら、私の意に反して打ち合う流れができちゃうじゃん。  こ、こうなったら……。  ここは、ここはイチかバチか……、イケメンの前だから、あんまりこんなこと言いたくないんだけど……仕方ないよね。 「おおお沖田さん! じじじ実は……今、お腹が痛くて、溜まったものを出しに行かなきゃ、もっ……ももも漏れそうなんですよ……てへへ」  くそぅ! こんな恥ずかしいことを言わざるを得ないのは、他に緊急回避の仕方が思い付かない自分のせいだけど、それにしたって恥ずかしいー!  乙女がお腹を下しているという台詞は、恥ずかしすぎだよぅ!  ほら! 見て!  イケメン沖田さんがドン引きして……て……  ……あれ? ヒソヒソヒソヒソ…… ヒソヒソヒソヒソ……  周りが、私を見てないかい?  あれ、哀れんだ視線がこっちを向いてないかい?  引いてるのは沖田さんだけじゃなかった……?  そ、そんなぁぁあああ!!     
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