浅葱色

13/42
前へ
/86ページ
次へ
  「沖田君、君は稽古中だから、私が厠へ連れて行くよ。」  哀れんだ目で私を見る源さんが沖田に言い、沖田は足を止めて首を横に振る。  ……どうやら、沖田は私を案内したいみたい。 「……まさか……」  こんなとこで二人きりのチャンス到来ってこと?  乙女フラグを木っ端微塵にしておきながら、実は……話す機会伺ってくれてたりする?  わざわざ、稽古を抜けてまで案内なんて……き、期待しても良いのかな? 「僕が行きます。こんな変な言葉を使う女、源さんの横に並んでほしくないです」 「…………ん?」  今のは……幻聴ですか?  浮わついてた私の顔が固まったよ?  幻聴だよね? なんか私を拒絶する言葉を聞いた気がしたけど……幻聴だよね?  そうだと言ってぇ~っ! 「いや、平気だよ。沖田君に、迷惑はかけられないからね。 沖田君が居ないと、隊士の稽古がはかどらないし、私が行こう」 「いえ、僕が行きます。さっきの発言、聞きました? 挙動不審な態度に加え、超動けるだなんて、言葉の使い方を間違えています。 土方さんも、何故こんな女を女中にしたのか……変な女に屯所内を歩かれるだけで、稽古に集中できませんよ~」 「っっ!?」  し……しまったあっ!  私の言葉に印象が下がりまくってんじゃんよ! 「そっそれは!「方言だ」……え」  私の言葉を遮る低い声。  ハッとして声の主を見るために振り返ると、真面目そうなスマートボーイが立っていた。  
/86ページ

最初のコメントを投稿しよう!

314人が本棚に入れています
本棚に追加