浅葱色

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   ああ、でも。涙目になるのは厠だけじゃないかもしれない。  お風呂も同じ感じかもしれないじゃん。台所だってさ、汚ないかも……。  うわぁっ、女中やりたくないな~。現実は厳しすぎるよぅ。  これから、を考えると肩が下がって……溜め息が口から溢れた。  すると……、 「どうかしたか?」 足を止めて振り返ってくれたスマートボーイ。  どうかしたか? って聞かれてもさ、時代が違うから参ってますなんて言えないんだよね。  なぜなら、あの怖い土方に私の素性は誰にも言っちゃいけないって言われてて……言ったら首が胴体にサヨナラ告げるって脅されてるから。  言えないのよお!! 「いやぁ……敷地が広いなぁと思いまして。 あっ、そういえば名前を聞いて無かったですよね?」  このままこの話をしていれば、ボロが出そうな気がして話題を逸らした。  我ながら、話題はナイスチョイスです!  だがしかーし! 「……名を聞くときは、まず己から名乗ること。気をつけた方が良い」  ダ、メ、出、し、された。  かなり真剣にダメ出しされちゃいました。 「はぅ、すみません。春日 仁菜です。宜しくお願い致します」  ガチ凹みしそうな気分。  確かに、自分から名乗るのは当然なんだけど……超真面目顔で言われたら、ダメージ喰らうんだよ。  もっと笑顔で言ってくれたら、ダメージ0なのにっ!     
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