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やけに屯所が騒がしい。
ったく……なんだってんだ。
腹の中で悪態つきながら、
俺は自室の障子を開いて、ザワザワと喧しい門の方へ足を進めた。
「だからぁっ! 女中がしたいから面接をしてくれって頼んだだけじゃんっ!
あだっ! あだだだだだだっ!
腕っ! そんな引っ張ったら腕が取れるって!」
近づけば近づくほどに耳につく女の声。
「土方さぁ~ん。
変なのが門に居るんですけどォ」
クスクスと笑いながら駆け寄ってきたのは総司。
いかにも面白いことがありますよ、と言わんばかりの嬉々とした雰囲気に、面倒さが沸き上がってくる。
自分でも分かる。
今俺は、眉間に皺が寄っているだろう。
面倒ごとは、嫌いだ。
「総司。テメェは、やかましい隊士たちを隊務に戻せ」
睨むように総司を見遣ったあとに、口から出る溜め息。
「え~僕も、成り行きを見たいのになァ」
「…………」
拗ねるよう口を尖らせる総司に、意図的な無言の威圧をかけて睨めば、総司はわざとらしく肩を竦めた。
「はいはい。分かりましたよォ。鬼の副長は怖いですね~」
全くもって感情が籠ってない言い方をしながら、総司は隊士に声をかけに動き出す。
その姿を確認し、俺は足を進めた。
この騒がしさの元凶が何者か……大したことでなくても、ちゃんと知らなきゃならねぇ。
「いだだだだだっ! てか縄! 食い込んでるから!
どうして捕縛されないと駄目なわけ!? ちょっ……イタイってばっ!」
耳につく高い声に、たまらず俺の顔が歪む。
早口でデケェ声は、頭にキンキンと響いてくる。
ったく……
「……うるせぇ」
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