浅葱色

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  「ねぇねぇ、女中さん」 「な、なんですか?」  ゆるーい新撰組ってどうなんだ? なんて考えてた私に、藤堂がニコニコと笑みを浮かべて話しかけてきた。 「もしかして、女中さんて剣術できたりする?」 「なっ!?」  こ、これは……さっきもこんなシーンがあった気がする!  できると言ったら手合わせ……になったよね?  沖田と手合わせさせられそうになったよね!?  うわー、その手合わせっていう状況に参った後だし、できるなんて言いづらい。  てか、言えないよ……。 「いえ、出来ないです。竹刀の握り方しか分かりません」  剣道は初心者マークの私。  その私は、握り方だけは完璧なので、付け足すように言ってみた。 「へぇ~、そう言いつつ、強かったりして」  でっ……ででデジャブぅぅぅ!  どうしてそう繋がるの!  握り方だけって言ってるのに! 強いわけないじゃん!  どうしてそうなるのよ、ココの人たちは! 「そうは見えんが……実際はどうなんだ?」  オイー!  スマートボーイまで乗っかって来たよ馬鹿! 「で、できませんよっ! まったく出来ないです! 握り方だけって言ってるのに、どうしてそうなるんですか!?」  手合わせの方向を断固阻止したい私は、少し口調を強くして言った。 「どうしてって、自分の姿をよく見てみなよ。稽古着を着てたら、誰だって剣術できると思っちゃうよ? それに、女の子はそんなの着ないしさ~」 「え…………け、稽古着」  ノオオオオオっ!!  今更じゃん! かなり今更だけど! 私、稽古着だったよチキショー!  そりゃ誰だってそう思うよね。剣術できるって思われるような格好してますもの、私。  剣道の稽古の時は、着替えが面倒だから着たまま道場に行ってたのよ……うん、こりゃ自業自得だわ。  こんな簡単なことに気づかなかったなんて……私、馬鹿じゃん。     
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