浅葱色

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   藤堂が自分で螢って人の名前を出したのに……顔を曇らせるなんて。  私に聞かれて困るなら、言わなきゃ良かったのに。  そう思っていたら、苦笑いで藤堂が口を開く。 「前までね、螢ちゃんって子が居たんだよ。男と偽って、隊士を……」 「藤堂。それ以上言わなくて良い」  せっかく教えてくれようとしていた藤堂の言葉を遮るように、斉藤から低い声が放たれた。  どうして言わなくて良いと斉藤が言ったのか、分からないや。  要するに男だってことにして新撰組に居た螢って人は……藤堂が言いかけた言葉を拾うと隊士をしてたってことになる。  しかも、前まで……ってことは、今はいないってことになる、よね?  男と偽って隊士……。  新撰組には入隊試験があるはずで、それに合格した女の人。  剣術が出来る女。  そこまで考えて、ピンときた。  沖田が言ってた男装した強いアノ人は、きっと螢って人に違いないと。  そうなると……螢って人が剣術がうまかったせいで、私の更なるイメージダウンに繋がったっことになるんじゃない?  だって、そんな人がいなければ、私はきっと剣術の手合わせなんてしなくて済んだ気がするもん!  螢のせいで私のイメージが最悪になったんじゃん。  たくさんの人の前で、お漏らし寸前の哀れな女って印象を撒き散らすハメになった私に適当で良いから謝ってくれよ馬鹿螢ぅぅぅ!  って……心で叫んでも意味ないか、事後だもんね。  それに、その人のせいじゃないのも分かってる。今更だ、今更……そう思っとこう。     
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