浅葱色

26/42

314人が本棚に入れています
本棚に追加
/86ページ
   藤堂に別れを告げ、斉藤と土方の元へ行くと、ブスッとした土方は、顔で不機嫌さをアピールしていた。  簡潔に着物の話をした斉藤に、土方はかなり嫌そうな顔をして金子を手渡す。  つまり、土方が着物を買ってくれるらしく……やっぱり優しいんじゃん。幽霊とか信じてそうじゃん、と心で思った。  たいてい怖い顔を作る人間は、幽霊や心霊現象、オカンやオトンにビビるという相場が漫画では決まっているから。  私は土方が幽霊を信じていると、確信に近いものを感じている。  なんて土方の話はどうでも良いか。 「ランララン、ランララン、ラ・ラ・ラ~ン」  ルンルン気分で屯所内を斉藤と歩く私は、機嫌が最高潮に良かった。  何故なら、着物の仕立てのためにこの京を物色しながら買い物へ行けるだけじゃなく、同行には斉藤と沖田がついて来るから。  沖田だよ……沖田。  あのモロタイプの沖田と一緒だなんて……幸せすぐる。うふふっ。  頬が紅く染まっちゃってるような気がするけど、仕方ないよね。  一目惚れ相手と同じ空間を共有できるんだから、自然と浮き足だつし、頬も染まるよ~。  なんて、浮かれている私は、隣に居る斉藤に引かれているのに気づかないまま、屯所を出ようと門に向かっていた。 「あ~、来た来た!」  なぬ、また居た!  待ち伏せしたかのように、再び藤堂に遭遇。  そして、藤堂の隣には…… 「…………」  無言で私を見る沖田きゅんっ!  はぅ~、なんという綺麗な顔なんだ。  彫刻ですか?  王子様ですか?  やばいよ。見てたら、なんか、鼻息が荒くなってきた……。     
/86ページ

最初のコメントを投稿しよう!

314人が本棚に入れています
本棚に追加