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「沖田さん、稽古を抜けても大丈夫だったんですか?」
無言なのも退屈で、何となく気になることを問うと、沖田さんは私に見向きもせずに口を開く。
「ええ。それよりも……貴女は剣術が出来ないんですか? 私には出来るって言っていましたよね?」
ゲッ……なんか怒ってんの?
不機嫌なのはそのせい?
私が嘘ついたみたいになってるじゃん。
「剣術は……出来ないです。
というか、握り方と素振りの仕方を知識として知っているだけで、実際に振ってみれば皆さん程の腕が無いんですよ。
なんというか……できるとは言えない程度なんです。
なのに、ちょっと知識があるだけで調子乗っちゃって……できるなんて言っちゃいましたぁ。えへへ」
苦笑いで正直に言うと、沖田はため息をついた。
益々好感度が下がった感じ?
少しだけ不安に思いながらも、たかが剣術じゃん、と思うんだけどなぁ。
「……そうですか」
わ、そっけない……。
たかが剣術なのに、そんなに怒る必要ないじゃん。
「総司、何をそんなに不貞腐れているんだ?」
おっ、いいぞ! スマートボーイ! もっと言ってくれい!
助け船のように会話に参加して来た斉藤は、私と同じ考えなのかもしれない。
たかが剣術……ってね。
だけど、その考えはすぐに消え去ることになる。
「不貞腐れる……ね。一君なら、理由が分かってると思うけど?
僕が、稽古を抜けてまでここに居なきゃならない理由は?
彼女についてる人間は何?」
至極不機嫌で言った沖田。
今さ、聞き捨てならないことを言った気がしたんだけど……?
気のせいじゃないですよね!?
「ちょっと待って下さい! 沖田さん! 今、何て言いましたか!?
もしかして……もももももしかして……
私に憑いてるって言ったんですかぁっ……!?」
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