二匹目

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   隊士に声をかけながら、女の居る場まで行けば、キンキン声の正体である女がいた。  垂れ目がちの大きな瞳。その目を俺に向けて何かを呟いたが……小さすぎて何言ってんのか分からねぇ。 「副長! この女……」 「あぁ……部屋に連れてけ」  俺は、縄で縛られている女をまじまじと見ながら返す。  この騒ぎを見ている隊士とあまり変わらぬ稽古着。  女は着ることがないというのに、この女はそれを着ていて……更には、上等そうな物ときた。  そんな格好をした女を見たのは、初めてではない。  その姿を見て、脳裏に直ぐ浮かんできたアノ糞餓鬼の姿。  アイツも……男の格好をしてやがったし、その着物は上等そうな物だった。  女をひとしきり見た後、踵を返して部屋に戻る。 「テメェら、隊務に戻りやがれっ!」  まだ落ち着かず女を見ている隊士に声を張って言えば、それぞれが俺の声に恐れながら足を踏み出す。  それを視界の端に見ながら、胸に渦巻くのは嫌悪のような気持ち。  勝手に口から息が漏れた。  あの餓鬼を、頭に過(ヨギ)らせるだけで……俺の気分は害される。  あの鋭い眼光も、無駄に勇ましい立ち振舞いにしても、何事にも屈しない凛々しい清廉(セイレン)な姿だって……。  俺らには到底真似できねぇくれぇの強い存在感が、未だ忌々しく思えてならねぇ。  狼と言われる俺らより狼らしい糞餓鬼。  たかが上等そうな着物という共通点だけだが、嫌な予感というのもあって、あの女が、二匹目じゃなきゃ良いが……と胸の内で呟いた。     
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