浅葱色

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   斉藤に案内されて辿り着く部屋。  やけに中がシーンとしていて、物音一つ聞こえない。 「斉藤です。春日を連れて来ました」  斉藤が声をかけると「入ってくれ」と声が聞こえてきた。  一気に高まる緊張感。  視界が開けるように、カタリという音から一気に部屋の中が見えた。  まず、思ったのは、一日に何回会うんだ? ってこと。  今日、既に見飽きた仏頂面の土方が視界の端に居て、やっぱり怖い。  真ん中に、ドッカリ構える男は目を細めて微笑んでくれてる。  そして、土方の対の端に猫を膝に乗せているゆるキャラ二人目……。  三人を視界に捉えたまま動こうとしない私に、声がかけられた。 「緊張せずに中に入りなさい」  真ん中の男が優しく声をかけてくれたお陰で、私はやっと動ける。  「失礼します」と言いながら軽く会釈し数歩進めて、私は気づいてしまった。  三者三様に……刀が横に置いてあることに。  この場合、どう考えるべき?  嫌われたらクビだけど、首が斬られるのクビってことかな……そうなの?  頭に思いついた物騒な考えに、思わず顔がひきつる。  粗相なんて絶対にできない死亡フラグが見える気がして、逃げ出したい気分に落とされた。  頭に思いつくだけのテレポート的なゲームの呪文は、ここで通用するのかしら……なんて、答えを知っていながら慌てる脳内で考えた。  もし、私が過去にタイムスリップしたレア人種なら、斬られても「キレてな~い」なんてことも可能性としてはあるかもしれない。  もう、死んでるわけだし。  でも、そんな奇跡は無い。断言できる。  何故なら……さっき大根切った時に、うっかりしてて薄皮切れたもん。  ……やばいな。死亡フラグみたいなの見えてきた気がする。  しかもさ、私、本番に弱いタイプなんだよう。     
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