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カクカクと膝が笑いそうな私は、力を抜けば倒れちゃう……なんて、か弱さは必要ないし、歩けてしまう不思議。いっそ倒れたかった。
何とか座った私は、トキメキとは程遠い嫌な心音を体から聞き取りながら、深呼吸。
私が座ったと同時に「うむ」と言った恰幅良い正面の男に向かって先に口を開く。
「あのぅ……、わ、私を、ききききき斬っちゃうつもりなんですかね?」
目についたし、気になって仕方ない。
だってそれ、殺す道具だよ。そんなものが三者三様に横に置いてあるんだから、聞きたくもなる。
斬るつもりはない、って言ってほしいんだよ。そう言われるだけで、安心できるから。
「……こんな奴なんですよ」
深いため息と共に、土方は私を顎で指しながら言う。
「む……なかなか、可愛げのある子じゃないか」
「確かに。螢さんとはまた違った雰囲気ですね」
恰幅の良い男に続き、ゆるキャラ2号が言葉を続けた。
またしても螢キタこれ。
ゆるキャラの口から出た螢って名前に私の脳が反応する。
ここの人たちは、螢って人が女の基準みたいになってるの?
何でそんなに螢って名前を耳にするんだろ。
絶世の美女……だったのかも。
あ、今はそんなことどうでも良いや。
「あの……」
見事に無視をされている私は、怯えながら声を出した。
もちろん、視線は刀に向いていて……やっぱり、怖い。
それは、斬るためのものだって、知ってるだけに怖い。
話すだけなら、そんなもの要らないんだし。
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