浅葱色

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  「大方はトシから聞いていてね、君のような珍しい子をこちらとしても他所へはやれないと思っているんだよ。 ほら……これから先に起こることを知ってたりするのだろう?」  微笑みながら言う近藤に「はい」と肯定の意で返すと、近藤は笑みをそのままに続ける。 「だから……君の望む通りに住み込みの女中をしてもらっても良いのだけどね、二三聞いておきたいことがある」 「なんでしょうか?」  近藤の柔らかい笑みとは裏腹に、伸びた背筋から放たれる威厳に思わず私の緊張が高まる。 「君は……ここで何がしたいのかな? ここは、女の子を住ませるには酷な場所。 住み込みの女中をさせるにしても、君がここに居るだけの得は無いばかりか、損の方が多い。 君のような笑顔が素敵な子であれば、他に行けるところもあっただろう。 なのに、何故、新撰組に来て女中がしたいんなんて言ったんだい?」 「え、えと……」  何故、と改まって言われてしまえば……理由はとてつもなく言いづらい。  読んでた携帯小説のように、ここに来たら雇ってもらえると思った。  あわよくば、恋愛なんてしちゃったり~って、思ってたけど……こんな理由を言えないことは分かってる。  だって、こんな理由で印象が良くなるはずがないし!  やばいよ。これは、なんて言うべきか悩ましいところだ。     
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