浅葱色

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  「いいじゃないですか。彼女を置いてあげましょう。 彼女の気が変わって、これから先に起こることを、教えてくれるかもしれないですし……ね」  場の雰囲気を和やかにするためなのか、優しげな声色で山南が私を見て言った。  “彼女を置いてあげましょう”そう言ったってことは、やっぱりここに置くか置かないかも含んでの問いだったみたい。  私は、山南が言ったみたいに、これから先に起こることを言うことは絶対に無い。  だから、無いって言いたいんだけど、アイコンタクトなのか……山南の目は同意を求めてるように見える。  きっと、ここで肯定しないと新撰組には置いてくれないんだろうなぁ。  心では、分かってるんだけど…… 「……心変わりはしないです。平和が訪れると知ってるから、それを変えたくないんです」  弱々しくも、本音を言った。  言ったと同時に、それが示すことの本質を、心で苦く噛み締めた。  私をここに置いてもらえる可能性を蹴ったという易い本質ではない。  平和が訪れるための維新が成し遂げられた時、新撰組がどうなっているかってことだ。    
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