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人を斬れる人が住まう場所。
それを思い出した時に、ふと頭に過ったのは……新撰組の行く末。
忘れてたのかもしれない。
新撰組は、いずれなくなる。
ここに居る三人の死の訪れを、私は知っている。
私は、助けられる命を助けないと言っているようなもので、頑なな意思で変化を拒むつもりでいるのだ。目の前の命を救うことも出来るかもしれないのに。
沖田だって、病気で……。
キュッと膝元で拳を作る。
知っていることは、残酷なものばかり。志を、誠を貫く浅葱色の果て……命の終わり。
なのに、何故か私は拳を作っただけで終わった。
胸が痛いとか、そんなこともなく、ただ、知っているものが残酷だと他人事のように思えていたから。
だいたいにして、人を斬り殺すことがあると知っていながらも、実感として湧かない。目の前の人たちが刀を側へと置いているにも関わらず、抜かれるのが想像できない。
私に向けられたら怖いとか、そんなことも思うけど……それでも私は喋ることが出来ているのだから、真に恐怖を感じているわけではなかった。
声が出ない程の怖さを知らないばかりか、今だって、睨まれて怖いとかそんな気持ちしかない。
私が理解できていないことを……私が気づいていない。
もっとも、気づくのはまだまだ後になるのだが。
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