猫に負けた日

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  ―――――――――――― ―――――――― 「ぢ、ぢ、ぢがれだあ……」  幕末に来て、面接に受かったと思えばクビにされそうになって。  居場所のない私は、何がなんでもここに居たいからと、新撰組に来た今日を全力で働いた。 「……なんという忙しさっ! 一日目だってのに休む暇すらなかったし、沖田さんを探しに行くこともスマート斉藤に邪魔されたし、ご飯とか風呂の準備……きったない屯所掃除をここぞとばかりに押し付けてきた土方コノヤロぉぉおおぉぉ……ぉえっぷっ……しんどすぎて吐きそう」  一気に喋ったからなのかな……なにかが込み上げて来ちゃった。女の子であり乙女なのに。気を付けよう。  井戸の水を組み上げるのさえ苦痛に感じる私の体は、灰になりかかってる。  本心を漏らせば、こんなのが毎日とか無理じゃね? って、既に白旗上げたいんだけど……自分がここに居たいって言った手前、今さら言えないし、いく場所もない。  住み込みだから休みとか……あるとは思えないっていうか、あんの土方から休みを貰えるような気がしない。  どっちも苦しいけど、それなら住む場所に稼げる今の方がよっぽど良い。それに、沖田もいるしなー。  まあ、その沖田に夕飯の時、見とれていただけで何故か箸を飛ばされたんだけど。 「ハァ~」  真っ暗な闇の中でわざと長めの溜め息を溢した。  だって、怖い。幽霊出そうだし。  街灯がないから真っ暗で、肌寒い。このヒンヤリ感は、季節のせいだよね?  目が慣れてきて、大方見えてるから歩くことはできるんだけど……怖いものは怖い。  それなのに私は、闇の中を歩いて井戸まで来ている。  理由は、風呂に入れなかったから。  だから、手拭いで体を拭いて寝ようと思って。  ここじゃ当たり前みたいで毎日風呂に入るとかあり得ないらしいんだよね。  出来れば、私はお風呂に入りたいけど……クビの話の後だけに、言いづらくて結局言えないままこうなっちゃった。 「風呂入りたいなァ~」  怖いからちょっと大きめの声で言ってみる。幽霊のことを考えないようにして、早くここから去りたい。  でも…… 「風呂にねぇ……確かに汚そうだもんね」  唐突に声が聞こえてしまった。 「っっっ! キャァァァァァアアアアア!!」  去る前に幽霊来たァァァアアアア!!!   
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