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「ふぐっ」
勢いよく叫んだ私の口を、後ろから何者かに手で塞がれ私は窒息……しないけど!
驚くままにビクリと肩が揺れる。
「五月蝿い。こんな女中を雇う土方さんは頭がおかしくなったのかなァ」
独り言のような声が耳の近くで聞こえ、背に感じる誰かの存在にドキドキと心拍が上がってゆく。
この声……幽霊じゃない。
私には分かる。この人は……、
「むむむむん」
沖田さん! って言いたかったのに言えてない。
どんだけしっかり口を塞いでくれちゃってんのっ!
私が何を言っても通じないくらい口を塞いでいるのを察してか……頃合いをみてなのか、手が離れた。
もう少しその手を私のマウスに付けてくれてても良かったのに……と残念な気持ちが生まれた私は、離れてく手を握ろうとしたけど……、
スカッた。
思いの外、素早く手が離れたよチキショーっ!
「で、何をしてるんですか? こんな真っ暗闇の中で」
間延びした声は、どうでも良いと言わんばかりの雰囲気があって。面倒、とも聞こえてきそうな声色。
それに構わずに振り返ると、何故か距離が開いてた。
さっきまでは背中に沖田を感じていたのに……何故?
「あはは、体を拭こうかなと。お風呂に入れなかったので……」
「へぇ~」
反応が薄い……薄すぎる。聞いてきたのは沖田さんなのに。
今日一日で、クールなイメージがついてきたような気がするくらいに反応がない。
「沖田さんは、どうしたんですか?」
まあ、でも。反応が薄かろうとせっかく沖田と喋るチャンスで、しかも二人きりなんだから……会話をしたいよ。
反応がないこともあるかもしれない。だから、頭の中では次の話題を探していて、必死だ。
必死だというのに……、
「それ、僕が言う必要ないよね~」
早速、ザックリと話題を斬られたァっ!?
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