猫に負けた日

5/23

314人が本棚に入れています
本棚に追加
/86ページ
  「じゃっ、じゃあ、沖田さんの好きな女の好みとかありますか?」  バッサリ斬られてもメゲない! 少し心が折れそうだったけど、今日会ったばっかりだし。  急に会話がうまくいくとも……思わないよ?  今のままじゃ思えないしね。  沖田の好み調査のためにも、私は少しオドオドしながら新たな質問を投げた。  なんか、緊張する。好みを聞くだけなのに。ドキドキする。 「君以外かな~」 「え。え、えっと……私以外の女が好みってことですか? 私一人が好みとかではなく?」  あれ、聞き間違えたかな?  何かをぶった斬られた気がする。  確認するよう沖田を見れば、面白くなさそうな顔で長い髪を耳にかけていた。  うっとりするほどに綺麗な顔。  その顔の中にある口からは、 「君は好みじゃない。僕さ、僕に魅とれる女が一番嫌いなんだよね~」  痛恨の一撃になる言葉が放たれた。  バッサリ振ってくるなんて、生まれてから初めてなんですけど。  しかも、ナルシスト発言っていう……。  実際にモテそうだし何も返せませんけどね。  ナルシストになるのも分かるほどに、美しい顔をしてるから。 「……は、ははは。じゃ、じゃあ、私はともかくとして、他に女の好みとかありますか?」  既にフラれているんだけど、やはりそんな簡単にフラれてしまえば……逆に飲み込めなくて。  今は会話することに集中しようかな、なんて自分に言い聞かせる。  更には、会ったばかりだし。と慰めの言葉を自分の心で呟いた。 「……くだらない。もう寝よ。 林さんも大変だろうな~、お疲れ様で~す」  え! なっ、なに!?  質問をくだらないの一言で一蹴して、林さんとか知らない人を気遣いながら去ろうとしてるよっ!? 「まっ、待って下さい沖田さん!」  二人きりで会話できるのに、ここで去っては欲しくない! もっと、話したいよっ!  慌てて去り行く沖田の着物にしがみついた……その時。  きゅ、きゅ、急展開が! 「あっ……」  私が勢い良く沖田の着物の腕の部分を引っ張ったせいで、ズルリとはだける沖田の着物。  半分振り返った沖田の露になった肩に胸が視界に入って……これは、ヤバい。  素敵な肉体にドキドキが……止まらないよっ。  
/86ページ

最初のコメントを投稿しよう!

314人が本棚に入れています
本棚に追加