猫に負けた日

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  ――――――――  ひんやり冷たい手拭い。  それは、お風呂に入れないから体を拭くために用意したものであって……決して頭やこめかみを冷やすために用意したんじゃない。  だというのに!  沖田の指がめり込んだところに当てなきゃならんことになった。 「テメェ……色気もねぇのに、よく総司に色をかける気になったなァ」  説教だ。土方は夜中にも関わらず私を解放してくれない。  沖田は土方の元に私を連行した後、さっさと部屋へ戻ってったしなー。  っていうか、土方が戻らせたんだけど……。 「色でもかけりゃ、総司が何か吐くとでも思ったか?」 「吐くって何ですか? なんで私が色仕掛けしたら沖田さんが吐くんですか? それは言い過ぎでしょうよ、胃の中がひっくり返えるほどの不細工じゃないですよ、私は!」  土方の酷い言い様にカチンときて言い返したら、何故か土方は深い溜め息を吐いた。 「だいたい、こんなピチピチ十八歳の私に色をかけられたら……少しは喜んでも良いと思うんですけど? たぶん」  きっと、喜ぶはずだ。喜ぶはずだよね?  私は、そこまで可愛くはないけど……だからって不細工じゃないと自分では思ってる。いや、思いたい。  こんな私でも何人か彼氏はいたし、それなりに経験もあるんだよ。  好みもあるかもしれないけど。  「十八年生きていらながらにして発育してねぇ体の割りに、調子に乗ったことを言うじゃねぇか」 「発育してない体!? なっ、なぜ、それを……? まさか……覗かれていた……?」  引き気味で土方を見ると、奴は半眼で私を見ていた。 「斬られてぇのかテメェは」   
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