猫に負けた日

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   鳥の鳴き声さえ聞こえない。ぐっすり寝ていた私は、何故か目が覚めた。 「ん……ん、ん?」  開いた瞼。  視界が広がり、そこには誰かいる……? 「っっ! キャんぐううう!」  男の人が視界に入って、驚いた私の悲鳴は直ぐに手で塞がれる。  そのせいで、まともに叫べない。  だ、誰っ!?  気持ち悪い! 何で私の部屋に知らない人がいるの!?  これって……お、か、さ、れ、る! 「すみません、驚かせました? なかなか起きて来ないので、起こしに来ました。早く身支度を済ませて、勝手場へ言ってください」  怖い怖いこわい!  って……え? 起こしに来た?  スルリと私の口を塞いだ手を退けた男は、苦笑混じりに部屋から出ていく。  どうやら、本当に起こしに来ただけだったみたい。  っていうか、ここ……あ、あれ。私の部屋じゃ……ないよね? 「……あ、そっか。新撰組か。ってか新撰組じゃん! まじか、昨日のことって夢じゃ無かったんだ!?」  上体を起こしてキョロキョロと回りを見渡せば、確かに昨日見た光景と同じで。  ちゃっかり広げて置いたまんまの着物まである。  うーわ! まじで新撰組なんだ。  ってことは……沖田もいるじゃん!!  目覚めて、直ぐにテンションが上がった。小説と同じようなことが、今日も続いてる。  お美しい沖田に、今日も会える!  そう思えば、嬉しい気持ちが心臓をドキドキと走らせた。  
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