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着物を着れなくて困っていた私を助けてくれるのかと思えば……ピーンチを招いたーっ!
なんて、一人で焦って恐怖していれば、更にキツく腕を握られて、
「いっ!」
痛みが顔を歪ませ、私の力が僅かに抜けてしまう。
「アンタを襲うくらいなら、猫と遊んでいる方が幾分良いってもんです。
馬鹿なこと言ってねぇで、ジッとしててくだせェ」
「なっ……」
なん……だと?
笑顔で言われてるんだけど、どことなく不満げな声色。
しかも、私を襲うより猫と遊んでる方が幾分良いって?
「そんなこと言って、私の柔肌を……」
「ツルペッタンに、興味はねェです」
「…………」
言葉を被せて来たあげく、ひどい言い様だ。
思わず私が固まるほどのことをサラリと言ってのけられて。しかも簡単に手を離したかと思えば、襦袢を整えてくれた。
つ、ツルペッタン……。
「良いですかィ? 男に警戒すんのは喜ばしいことですが、あんまし調子に乗らねェこと」
膝をついて、私の着物を素早く着付けていくその男は、時折私の顔をチラリと見ながら言うけど……ひどい。
ちょっと警戒しただけで、調子に乗ってると思われたあげく、ツルペッタンなんて……っ!
しかも、笑顔で吐かれるその言葉が……胸に刺さるんですけどっ!
ヤな奴! ヤな奴だ!
この新撰組に来て、初めてヤな奴に出会ったよっ。しかも、初対面なのにっ!
細目でずーっと笑ってるこの男。ほんっとにヤな奴だー!
とはいえ、着付けてもらってるし、助けてくれてるけど。
しかも、私は大人しくしてますけど!
でも、ツルペッタンなんて表現……ひどいっ!
本当にヤな奴ぅぅううう!
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