猫に負けた日

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   無言だ。  ひたすら無言を貫いた。  帯がキツくて苦しくても、少しも声を出さなかった。 「じゃァ、着付けは終えたんでェ、直ぐに勝手場へ行ってくだせェ。春日さんは遅れていらっしゃるんで、ちゃんと謝った方が良いですよ」  無言だったからか、かなり着付けは早く終わって……。  ピシリと襟元を正しながらヤな奴が私に言う。  遅れてる……。  つまり、寝坊してるってことだよね?  イメージ回復! なんて昨日思ってたのに……既にできてなーい!  部屋から出ようとするヤな奴の背を見ながら、八つ当たりを含む気持ちで軽く睨んだ。  寝坊だし、奴に嫌なこと言われたし! 気分は最悪なのよ! 「あ……」  やべ。こっちに振り返りやがったよ、ヤな奴が。 「春日さん。人として、礼の一つも言えねぇのはどうかと思いますぜ」 「っっ……くっ、ありがとうございましたっ!」  笑ったままの顔が、激しくムカつくー! 「いいえ、どういたしまして」  どことなく、馬鹿にされた気がして……ほんとに気分が荒れる!  そりゃあ! 助けてもらったことに変わりないし、助かったけど!  ヤな奴に礼を言えって言われるのは、もっと不快で。  しかも、なんで笑ってんのよ! それが余計に不快になるんだってば!  さっさと出ていったヤな奴。  居なくなったかな、と思うとこで私は口を開いた。 「なんなのよ、細目野郎!」  新撰組に来て二日目。  気持ちよく始まるはすが、細目野郎のお陰で台無しになって始まった。  恨めしいよ、チクショー!  
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