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僕が座って居た座布団に、女中が滑り込んでくる。
それを避けて立ち上がると、小さくチッと舌打ちが聞こえてきたから、僕を狙ったのは間違いない。
たかが、お箸を落としたくらいで必死に走るなんて……はしたないし、気持ち悪い。
「僕、もう食べないから、それ下げてもらって良いよ」
狙われてるって分かるだけに、食べる気が失せた。
女中の行動は、明らかに度を越しているように思うんだけど、昨日の夜の一件があって尚、女中はここに居るんだから……。
土方さんは女中を易々と手放すつもりは無いんだろう。
面倒だな~。女中の存在がさ。
僕が食べないと言ったからか、何かを言いたげな顔をしている女中を一睨みし、そのまま部屋を出る。
出てから、後ろ手でしっかり障子を閉めた。
「……何?」
待ち伏せのように廊下に立っていたのは山崎さん。
含んだ笑みを僕に向けて、手招きをしている。
招かれては行かないわけにもいかず、重い息を吐きながら山崎さんの元へと足を踏み出した。
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