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「来ると思ってましたよ。山崎さんから僕が苛々してるって言われたんでしょ~?」
「……、らしくねぇじゃねぇか。いつもみてぇに隊士を無理矢理道場に引っ張りこんでんのかと思ったが……、心配損だな」
腕を組みながら現れた土方さんは、僕を見て口の端を上げた。
僕がどうやって苛立ちを発散させるのか知っている土方さんは、絶対にここに来ると分かっていたけど……。
思ったより早く現れたな~。
「ひどい言い方ですね。土方さん、もう話し合いは終わったんですか?」
「まっ……一応はな。もう暫くしたら集まるから、あんま稽古に精を出しすぎんじゃねぇぞ」
「土方さん。そんな早々に去ろうとして……、僕に何を言われたく無いんですか?」
言うだけ言って去ろうとする土方さんに向かって、僕は少し意地悪な言い方をした。
八つ当たりみたいなものだけど、少しでも土方さんの隠し事を見抜くためでもある。
「なにわけ分かんねぇこと言ってんだ?」
踏み出しそうになっていた足を戻して、土方さんは僕を見据えた。
まるで、本当に僕が意味不明なことを言ったように感じさせる、ふてぶてしい表情。
だけど……、それが土方さんの心の中を隠す表情だって、僕は知っている。
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