猫に負けた日

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  「じゃぁ聞くがよ。何者か分からねぇ不審な奴を、お前は捕縛しねぇのか? 二条に関わらず、今の御時世で不審な輩を見つけた時、テメェは新撰組として何をする?」 「…………」 「京を守ることが与えられた命であり、俺らのするべきこと。 二条は、なんの素性も明かさなかっただけじゃねぇ……、俺らから逃げた奴だ。 何かを企んでるかもしれねぇ十分すぎるくれぇに疑わしい奴だろ?」  土方さんの言い分はもっともで、逃げたからこそ更に怪しむのは道理で……当然のこと……。  土方さんは、僕が何も言えないのを満足気に見ていた。  そして「そういうこった、頼むぜ、総司」とだけ言って、今度こそ道場から去ってしまった。  幕府に仇なす者を討ち、京を荒らす者を捕らえる。  それが新撰組。  分かっていても、気乗りしない。  ただ……、捕縛し疑いが晴れたなら……今度こそ新撰組に仲間として迎え入れることができるかもしれないんじゃないかって、思った。  そう思うことで、この話を消化することにした。  ……だけど、 「……それにしても、唐突すぎる」  消化しても腑に落ちない僅かな蟠(ワダカマ)り。  何故あの子の話が今、再び持ち上がったのか……だ。  脱走を許さないという隊の規則は、彼女が脱走をした後の規則で……該当しない。  この二ヶ月以上で、彼女に関しての悪どいものは一つも耳に入っていない。  忘れ去られても良いことなのに……どうして。  頭を過るのは、何かを知っているという女中。  女中が知る何かの中に、あの子のことが混ざっているんじゃないかと考えるのが、一番辻褄が合う。  直接、本人に聞けば良いかもしれないけど……、僕が苛々するあの表情を思い浮かべると気分が萎えた。 「どうしようっかな……」  
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