猫に負けた日

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  ―――――――――――― ―――――――― 「私、なんかしたっけ? 昨日のこと、まだ怒ってんのかなぁ~」  沖田が、朝ごはんを残して去ってしまった。  お近づきになりたくて、落ちた箸を全速力で拾いに行ったのに……。  薄々感じてはいたけど……、私、嫌われてるんじゃね? 「何か言った?女中さん」  箸を握ったまま俯く私に、藤堂はご飯粒を顎につけたまま言った。 「顎についてますよ、粒が」  無理矢理笑顔を張りつけて言うと、藤堂は屈託のない笑みで顎に触れ、パクッと指ごと口に入れた。  その愛らしい顔と行動に、キュンとくる。  なんだこの可愛い生物は。  タイプじゃないけど、可愛すぎるよ藤堂。 「総司が食わねぇ分は俺が食うから片すんじゃねぇぞ!」  藤堂の隣から、ニッと歯を見せて笑う男――原田 左之助。  なにゆえ名前を知っているのかと言えば……昨日の夕方ごろにひょっこり挨拶に来てくれたんだよね。めちゃ良い人だ。  体格の良さと、体育会系特有の爽やかな歯を見せる笑みが印象的で……まあ、挨拶だけでほぼ喋ってないけど、元気なイメージがついてる。 「分かりました」 「おっと、仁菜ちゃん。 昨日も言ったがよォ、堅苦しい敬語はやめようぜ!」  太陽みたいな明るさのある原田の声色と微笑みに、私も釣られて笑った。  沖田も、こんな風に話してくれたら良いのに……と笑顔の下でぼやく。  やっぱり、好きなタイプのイケメンには笑ってほしいものだよ。私に向けての笑顔が欲しい。 「左之、米粒が肘についてんぞ。どうやったらそんなとこに米がつくんだ?馬鹿だからか?」  原田へ向けて、呆れた声が飛ばされた。  その声の主は、隊服が超似合うイケメンさん。今日も色男な……永倉 新八。  本人から名前を聞いたわけじゃない。挨拶もされていない。  どうやって名前を知ったかと言えば……イケメンだから、斎藤に自ら聞いたんだ!  あのイケメンは誰だってね。  ほんっと、今日も朝から妙な色気を感じてしまうよ、永倉ぁぁあああ!  なんでそんな色気があるんだ……?  どこからその色気が出てるのか上手く言えないけど、顔も良いし雰囲気も落ち着いてて……うっかり見つめてしまうんだから!  
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