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自己紹介は滞りなく進み、俺の番になった。
「えーっと、北中から来た古井 俊太です。これから一年間よろしくお願いします」
軽く一礼して席に着く。まあ、無難に終わ……
「つまらん。もう一回」
らないんですね、わかります。
安ちゃん先生の視線が怖かったので、俺はもう一度自己紹介をやり直した。
「北中から来ました古井 俊太です。好きな食べ物はお寿司です。趣味は映画鑑賞です。よろしくお願いします」
言い終わり、席に着く。もちろん一礼は忘れずに。
今度は自分の趣味や好きなものを思いつく限り言葉に並べた。
これなら文句ないだろ、と一人うんうん頷いていると、我が担任様は納得してないご様子で、
「なんかもの足らねえんだよな~。古井、お前中学で部活何やってた?」
「え、柔道ですけど」
中学時代の部活はトラウマなのであまり話したくない。
それが伝わるように、少し控えめに言うと、
「ふーん。よし、次」
満足のいく解答を手に入れたのか、それともただ単に飽きただけなのかわからないが、助かったようだ。
ふぅ、とため息をつく。
てか、何で俺だけ自己紹介やり直させられた?
ただ単に目を付けられただけなのか、それとも俺の自己紹介がそんなに興味を引かれるような内容だったのか……まあ、後者はないだろう。
教師に入学初日から目を付けられたというかなり面倒くさい事態に俺は焦ることもなく、ただ何とかなるだろうと、楽観的な思考を最後にこの問題を考えるのをやめた。
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