それぞれの前触れ

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秘書になってからの毎日は、目まぐるしいくらいに早く過ぎていった。 定時で帰れた日は一度もない。 残業は当たり前で、いつも家に着くのは9時をまわったころ。 わからないことだらけで、いろんな人からあれこれ教えてもらいながら、なんとか成り立っている状態…。 さすがにこれが一ヶ月続くと疲れてくる…。 社長は相変わらず俺様で、人使いが荒いし。 その社長と、朝から夜までほとんど一緒に行動しなければならない私。 ああ…。神経がもたない…。 それでもなんとか這いつくばってがんばっている。 すばらしいなぁ…。 自分で自分を誉める。 今日は金曜日。 もうすでに5時を回っていた。 今日ははやく帰れるかなぁ…? 涼太に会いたい…。 この一ヶ月、私は涼太にまともに会えていなかった。 秘書を任されたことは電話で話したが、忙しくて会う余裕がなかった。 涼太は涼太で、新しい仕事を任されたらしく忙しいみたい。 これじゃいつまでも会えないままじゃん、と思った私は昨日の夜、メールで「明日は仕事が終わったらまっすぐ涼太の家に行くから」と送っておいた。
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