それぞれの前触れ

5/10
前へ
/39ページ
次へ
コンコン。 「はい」 「私です。相沢です」 「…入れ」 「はい。失礼します」 ドアを開けて中に入る。 社長は、部屋の一番奥にある自分のデスクに座り、書類に目をむけたままでいた。 「お忙しいのに、すいません。あの、…社長。…お腹すきませんか?」 その言葉に社長は顔上げて私を見た。 目が合うと、私の心臓は一気にはやくなるのがわかった。 「お茶菓子、なんですけど、…もしよかったら、あの、置いておきますので…」 社長室も専務の部屋と同じように、ソファーとテーブルが並べられている。 そこへ置こうとした。 緊張で手が少し震えちゃう。 「なる。こっちに持ってきて」 ………え!? 今、私の名前呼んだ? 思わず立ち止まって社長を見つめた。 「どした?聞こえなかったか?」 「い、いえ!持っていきます」 心臓の音が耳元でなってるんじゃないかと思えるぐらい、ドキドキしてる。 「失礼します」 社長の隣にまわり、デスクの上にお茶菓子と緑茶を置いた。
/39ページ

最初のコメントを投稿しよう!

33633人が本棚に入れています
本棚に追加