それぞれの前触れ

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椅子に座って緊張もとけたころ、社長が部屋から出てくるのに気が付いた。 社長が近づいてくるに従って、また私の心臓がなり響く。 「なる、今から片桐のとこに行ってくる」 「はい」 私も社長の後に続いてエレベーターに乗ろうとした。 「なる。お茶ごちそうさま。あのままデスクに置いてあるから片付け頼む。」 「あ、はい」 「終わったら今日はもうあがってかまわない。そろそろ疲れてくるころだろ?あとは休め」 「え?」 「また来週からよろしく。おつかれ」 そう言って社長はエレベーターに一人乗った。 「あ、社長、あの、ありがとうございます。」 一礼して顔あげると、あれ?社長、笑ってる? すぐドアは閉まってしまい、よく見えなかった。 社長、笑顔だったと思うんだけど、気のせいかな? あぁそれにしても…うれしい! 社長に初めて労いの言葉をかけてもらえた! あの俺様社長に! うれしい! これからはもっと、ちゃんと仕事に向き合おう。 社長が仕事をしやすいように、私なりにがんばってみよう。 心からそう思えた。
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