生誕

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ある双子が生まれたその日、長らく交信が途絶えていた天界から、人間界に命令が下された。 その命令は人間界に生まれ落ちた「神の遺伝子を宿した子」を天界に送ること。 それは人間界の一部に大きな波紋を生んだ。 なぜならそれは天災のように人間界、魔界、天界を問わずほんの偶然に宿るという神の遺伝子が――迷信とされていたものが、実在することを示していたからだ。 人間界より大きな権力を持つ天界に言われ、人々はここ最近生まれた赤子を調べた。 そして双子の赤子、神の特徴、金の瞳を持つ赤子たちが見つかった。 人間と人間の間から生まれた子供たちであった。 しかし、そんなことは関係ない、と天界の者たちは言う。 仕方なく連れて行こうとしたが、そこでまた困惑する。 赤子は二人。だが、神はひとりとされている。 天界に指示を仰ぐと、その答えは「女の方を連れてきなさい」とのことだった。 なんでも、神の遺伝子は女に宿るらしい。 ならば、男の瞳の方は特別な変異に因るものなのだろう。 そういった見解から、女の赤子を連行しようとした人間たちだったが、そこで親の反発にあった。 父は「その子を連れて逃げろ!」と母に男の子を託し、人間たちに挑んだ。 男はとても強く、人間たちを蹴散らしたが――天界の者たちが駆けつけ、娘は連れて行かれてしまう。 それから、父は行方知れず。 母は、息子をひとりで守ることを決意した。
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